徒然草から学ぶ恋愛の極意
徒然草の百十段に「双六の上手」というのがあります。
双六の強い人にそのコツを聞くと、「勝とうとするのではなく負けないようにすること。」と言ったという内容です。
恋愛もまたこれなのではないかとふと思いました。
恋愛においての「勝ち」が「惚れられること」、「負け」が「嫌われること」だとすると
双六の強い人に言わせれば、二人の関係性において大事なことは惚れさせようとすることではなく嫌われないようにすることです。
嫌われることを避け、少しでも嫌われない行動を取っていくべきなのです。
しかし、負けないようにして勝つことは本当にできるのでしょうか。つまり、嫌われないようにすることで好きになってもらうことは可能なのでしょうか。
徒然草ではその事については語られていません。
いろいろと思いを巡らせているうちに、孫子の兵法に行き着つきました。
軍形編に答えがあるような気がします。
そこには、こう書いてあります。
孫子は言う。
昔から、戦いに巧みな者は、まず敵が自軍を攻撃しても勝てないようにしておいてから、敵が弱点を露呈し、自軍が攻撃すれば勝てるようになるのを待ち受けたものである。
負けないようにすることは自分自身によってできることだが、自軍が敵に勝つかどうかは敵軍によって決まることである。
したがって、どんなに戦いが巧みな者であっても、敵を勝たせない状態にすることはできても、敵を攻撃すれば勝てる状態にさせることはできない。
そこで、勝利の方法を知ることと、実際に勝利を実現することとは別であるというのだ。
いかなる敵も自軍に勝てないようにするのは守備のあり方である。
敵に勝てるようにするのは攻撃のあり方である。
守備を優先すれば兵力に余裕が生まれる。攻撃を優先すれば戦線が拡大することによって兵力が足りなくなる。
そこで古来、守備を優先して巧みに戦う者は、地底深くに潜むようにして守りを固め、好機と見れば一気に天高く飛び上がるかのように攻めに転じた。
そうした戦い方だからこそ、自軍を保全しながらも確実に勝利を収めることができるのである。
「負けないようにする」ことはただ負けない策を練るだけではなく、同時にじっとチャンスを伺うということなのです。
どんなに強いものでも、敵を攻撃すれば勝てるとは限らないと孫子の兵法には書かれています。攻撃して勝てるかどうかは敵の状態によるもので、自分にはわからない。自分自身の力でできることは「負けないようにすること」だけなのです。
徒然草の「負けないようにすること」と孫子で言うところの「負けないようにすること」は少し違うので、そのことについても考えていきます。
恋愛で置き換えてみると、徒然草の「負けないようにすること」とは、相手に嫌われないように接することであり、孫子で言うところの「負けないようにすること」とは、「攻撃するための力をつけること」つまりは「自分自身を高めること」だと考えられないでしょうか。
この2つから学べることをまとめましょう。
恋愛を「勝負」だとするならば、重要なことは「じっとチャンスをうかがい、ここぞという時に攻める」ということ。
そのために普段は「負けないこと」に徹する。
教養を深めたり、メイクを研究したり、ダイエットをしたり、コミュニケーションスキルを高めたりして自分自身を高める。接するときは、惚れさせようとするのではなく、嫌われないようにしていく。
自分自身が美しく知性があり、またそれを日々高めているならば、以前は話すのに臆してしまった人でもいずれ余裕を持って接することができるでしょう。
また接し方においては常に「嫌われない」ように接することで、二人の関係性は継続していく。
するといつか敵(好きな相手)が弱点を露呈させる瞬間がある。つまり、関係を進展させるチャンスが見えてくるということです。
そのチャンスに勝負を仕掛けるのです。
古典を読むといろいろなヒントが隠されていますね!